Fate/hollow ataraxia ネタバレ含感想

総評

日常パートは腹を抱えて笑い、シリアスなバゼットパートはいろんなことを考えたり推理したりと、ギャグと推理の交互が入れ替わりやってくきます。

絵と音楽がすごくよくなっており、またエフェクトは前回に比べてパワーアップしているといった様子。盛り上がる場面での演出面では最高潮まで盛り上げてくれたのがエフェクトと画像、音楽と文のコラボレーションだった。音楽が落ち着き、絵の質があがったことで更に戦闘シーンや見せ場に高揚する。

興味深かったところといえば、謎解きキャラ同士の問答や掛け合いあたり。善悪とか有無とか憧れとか無様さとか。

カレン・オルテンシア振興会

はじめは聖女、無表情という属性だけだと思っていた。それだけでも私にとっては心臓めがけてのストライクゾーンであるというのに、まさか女版言峰、策士と罵倒系があるとは。なんとも私にとっては天国とも言うべきキャラ。立ち絵ではにやり、としたあの笑みと、無表情で睨む立ち絵、きょとんとした顔で祈るポーズが素晴らしすぎる。。

カレンが士郎を拘束し、「……ゲット」などと言う様に神々しさすら感じます。「……いっそ暗黒面に落としたいトコロです」などと無表情で言う様に素敵な恐ろしさすら感じます。「……駄犬の分際で主人に逆らうなんて。去勢するところだわ、この早漏」と可憐な幼女と聖女のいでたちでさらりと言う様に心臓を射抜かれます。悪魔のような笑みから一転して可愛い照れ顔になる様にギャップが、ギャップが。おまけに金の目と銀の髪って美少女過ぎでこれで惚れるなというのが難しい上に節操なしの娼婦のようでいながら初々しくて少女の可憐さを持ち合わせているという。

好きなシーンリスト

天の逆月
バゼットとアンリが、それぞれの道が分かれても相棒として信じあう気持ち。
スパイラル・ラダー
悪魔と聖女が天の逆月へと昇っていく。
決戦
立ちはだかるアーチャーと、セイバー&士郎の対峙。エフェクトが一番凄かったのがこのシーン。力入ってる。
not,
ライダーが桜を守ろうと決めたその理由。
カレンⅤ
アンリの郷愁、憧れ。
夜の聖杯戦争6──Angra Mainyu
アンリの人生。号泣。
桃源の夢
夜の聖杯戦争6と同じくらい気合の入っているテキスト。泣きました。

シーン別考察

prologue.柳洞寺の怪談

由紀香による「窓辺の幽霊」の話、「新都の糸」の話、一成による「景山の贓物墓場」の話。「窓辺の幽霊」は双子館のバゼットが堕天(ヘヴンズフィール)する始めの場所。「新都の糸」は天の逆月にアンリとバゼットが辿りつく為の階段、「景山の贓物墓場」は多くのアベンジャーが生きているアベンジャーを仲間にひきいれる事。というように、本編の謎と執拗に絡めていることが推測できる。

聖杯戦争は過去の話だ。冬木市にはもう何の争いの火種もない。聖杯がなくなり、サーヴァントが消え、故人は帰らず、何の問題もない時間が流れていく。

そこにカレンの姿を朧げに見る。その後で、キャスターと葛木の姿が唐突に顕れ、士郎はそれに愕然とするものを感じるが、その違和感は現実と幻想の矛盾を孕んでいるため、整合性を保つ為にその記憶は「全員生存」している記憶に改竄される。怪談話、その後で起こる怪奇(回帰)現象。

一成の怪談話はともかく、何故怪談話になるほど見えるものだろうか、というか何故まるで過去誰かが見えていたという過去の話になっているのか。つまり、ここが起点であり、終わりの続きでもある──

Heaven's Feel Backnight Ⅰ

何か余分なものがあって、あるべきものが欠けている。

  • 余分なもの→無くした腕
  • あるべきもの→イヤリング

この二つは言峰とランサーに関与している。「今度も」という言葉があるということは、このエピソードは何回も廻った四日間のうちの一つということになる。だが、最初バゼットはこれまでの出来事を忘れていた。特に「何故廃墟に居るのか」「アベンジャーの真名」。Heaven's Feel Backnight Ⅱで、アヴェンジャーが思い出さないのは、思い出したくないからだということを言うが、勿論忘れたのはそれが思い出したくない現実だったからだろう。それならばこのバゼットはループの始まりであるバゼットだったのだろうか。おそらく違う。ループという現象が起こること自体、始まりというものを排除しているからだ。だからこのバゼットは、ループの途中で記憶を失った、もしくはループの最初であるバゼットが途中にやってきたかのどちらかになる。

またこの中にも、衛宮士郎を殻としている伏線がいくつかある。

  • 凶器を具現化させる
  • 達筆な日本語

凶器の具現化は投影を使っていると思われる。アベンジャーが持つスキルは無。

バゼットは冬木の街に八人目の魔術師がいると考えるが、恐らくこの八人目の魔術師というのはバゼットの勘違い。使い魔というのはアヴェンジャーそのものの形をとっており、それがマスター、魔術師というものが居るはずもない。「スパイダー・ラダー」と「―アトゴウラ―」で示されているように、アヴェンジャーは衛宮士郎という殻を被らなければあの怪物そのものである。もしその怪物を率いている者がいるとすれば、八人目はアヴェンジャーでありバゼットである。

ここにでてきたエーデフェルトの姉妹は、凛が後に「ロンドンにて」でルヴィアについて話したあとに語られる。六十年前、大戦中の第三回聖杯戦争に、エーデフェルトの姉妹は参加した。第三回聖杯戦争といえばアヴェンジャーが召喚された時である。つまり、この姉妹はエーデフェルト家の先祖であり、遠坂の先祖と第三回聖杯戦争を戦った宿敵とも言える存在だろう。というか、エーデフェルト、遠坂共に後継者が二人という忌み嫌われる性質を持ち、両者とも鉱石専門の魔術を扱うことから、もしかすると遠坂の祖先はエーデフェルトの出なのかもしれない。

Heaven's Feel Backnight Ⅱ

死者の蘇生には時間旅行、平行世界の運営、無の否定、いずれかの魔法が絡む。

そもそも無の否定とはなんだろうか。つまり無を有に変え、0を1にすること。本編でも出てきた言葉だが、死者では生者を蘇らす事は出来ないということに近い。要するに、0をかけても0になる無の存在から有の存在である1に変わることが「無の否定」なのではないだろうか。

センタービルの屋上からバゼットは魔力を感知し、二人はそこに向かう。アヴェンジャーが見た血痕と痕跡は、士郎とセイバーがアーチャーと対峙した痕アーチャーの服の一部が落ちたものだとわかる。ここで、二つの出来事はリンクしているが、士郎とバゼットの両者に起こっている聖杯戦争は全く別のものである。この両者の出来事は全く別の世界の出来事であると推察できるはずが、このリンクで混乱が起こっているのだ。もう一つのパーツを呈示すれば、「処刑観賞」、「サイカイ(バゼットと凛の顔合わせ)」「対決」「―アトゴウラ―」から判るように、バゼットから士郎は全く見えていない、話せていない状態なのだ。話していない、自発的に見ていないと見せかけて、これだけ全く邂逅しない士郎とバゼットの二人は、いる位相が違う、いる次元が違うと思えるほどだ。……やってきたのは貴方だけですか。何のつもりかは知りませんが、サーヴァント一人なら好都合だとバゼットが云っているが、隣には士郎も居る。

士郎とアベンジャーは会う事ができ、またバゼットと連れているサーヴァントは会う事ができているのに対して、バゼットと士郎(殻を被ったアンリ)が会うことができるのは天の逆月で逢った時のみである。つまり、リンクしているのにリンクしていないという状態。考え方を変えれば、士郎だけが仲間はずれなのである。

  • アヴェンジャー→士郎(可)
  • セイバー→アヴェンジャー(可)
  • セイバー→バゼット(可)
  • ランサー→アヴェンジャー(可)
  • ランサー→バゼット(可)
  • バゼット→セイバー(可)
  • バゼット→ランサー(可)
  • バゼット→士郎(不可)

セイバーとランサーの反応から考えると、アヴェンジャーも士郎もどちらも視えているようで、バゼットのように士郎だけ見えないということは起きていない。だから、バゼットだけ士郎が見えていないという結論になる。となるとその原因は何だろうか。

アヴェンジャーと士郎(アンリ)を別々のループに囚われた可能性だと仮定すると、どうしてアヴェンジャーと士郎が二人同じ場所にいるのかという疑問は解消できるが、今度は何故バゼットが視えていないのかという疑問が取り残される。もしかすると、士郎側からバゼット側に介入できるが、逆はできないということなのだろうか。アベンジャーと士郎だけが観測者として位置付けられているためその介入を観察することが出来るとか。

もっと単純に考えて、セイバー達の記憶が改竄されたように士郎とバゼットにも矛盾を解消する為の視覚野の改竄も行われているとも思える。第三回聖杯戦争が起こるバゼット側と第五回聖杯戦争が起こる士郎側では同時に起こっては矛盾を孕んでしまう。時折繋がってしまった二つの世界のタイトロープ。「サイカイ」ではそのタイトロープのような会話がなされるがそれが看做された。

アーチャーが士郎を狙うワケ

  • デッドブリッジⅠ
  • デッドブリッジⅡ
  • 残骸百景
  • 決戦

何故アーチャーは士郎を狙うのか。多分士郎殺しの目的も少なからずあるかもしれないが、そもそもアーチャーは何故センタービルから橋を狙っているのだろうか。主目的は使い魔の掃討と「常世の橋・右」で語っているが、「せいぜい、オレに騙されていろ」という言葉でアーチャーが士郎の正体に気付いていたと見ることができる。「残骸百景」では諸に介入したアンリが表出しているからその時に気付いたのかもしれない。あと、セイバーと戦ってみたかった、ということを「常世の橋・右」で言っている。

アンリの意思表出

  • 角笛(確かに)
  • ―アトゴウラ―

アンリがどうやって出現しているのかというのが判る。アンリはどうやら自発的に士郎の殻から外に対して介入できるようだ。当然だがそこに士郎の意志はない。

アンリ部分が強くでているシーンを抜粋。断っておくと、アンリと士郎は同一なので別々だというわけではない。念のため。

  • その未来は今
  • 四夜の終末
  • 残骸百景
  • 景山の一夜
  • その過去は既に
  • 桃源の夢
  • サイカイ
  • カレンⅠ
  • カレンⅡ
  • カレンⅢ
  • 角笛(確かに)
  • カレンⅣ
  • 天の杯
  • カレンⅤ
  • スパイラル・ラダー
  • 天の逆月

どのルート後であるか

Fateルートを改めて再プレイして思ったのだが、このFDの半年前というのはFateルートではないかと考えられる。といっても可能性として一番高い(Fateルート寄りのエピソードが多い)というだけで、本編で断定されているわけではない。

一応Fateルートのエピローグは聖杯戦争の二ヵ月後──四月。そのエピローグから半年後──十月。つじつまは合う。またその他時折入る画像と文章によるいくつもの伏線からFateルートに最も近いルート後だと理解できる。

サイカイ
セイバーに泪する。
朝の一時
二ヶ月前にもイリヤが生存している可能性。
午後の光
セイバーの微笑みを覚えていよう、と心に決める。
アイリスの土蔵
イリヤに捕まっているシーンの画像が一瞬挿入される。
常世の橋・右
アーチャーはセイバーと戦いたかった。Fateルートではバーサーカー戦で途中辞退してしまったからだろうか。
カレンⅡ
頑張ったヤツが報われないのはイヤなんだというセイバーに対する想い。
カレンⅤ

「黄金の別れ」のシーン、セイバーと別れる場面の背景である朝焼けの大地の画像。

古く、星という概念が、人々の寄る辺であったように。永遠に手を伸ばし、もう永劫に掴めないその一瞬を、ずっと眺め続けている──

エクスカリバーの星の夢を集めた聖なる剣とかけている言葉。

スパイラル・ラダー
最終決戦にて、セイバーと長い階段を上ったことを思い出す。

また、いろいろな可能性が混じっているのは、サーヴァントが現界しているという矛盾を解消する為に記憶をいじったから。例えば、「その未来は今」でのセイバーによる話は、

「私は英雄王を、シロウは神父を。その後、私は、凛の令呪で、聖杯を破壊した」

といい、士郎は独白で

セイバーと共に戦って、セイバーが冬木の街に留まる結末は、その流れでしかないのだろう。

(中略)

「──―いや、色々と都合のいい話をどうも」

と言っているが、セイバーは消えているからこそ、凛のサーヴァントであったとして、消えずに残っている矛盾ある事実を解消している。だからこそ、アーチャーははぐれサーヴァントとなっている。単独行動スキルがアーチャーにはあるから、消えずに残っていただけだろう。つまり表にすると以下のようになる。

  • 士郎→セイバー
  • イリヤ→none
  • 凛→(セイバー)
  • 桜→ライダー
  • 葛木→キャスター
  • none→アーチャー
  • none→バーサーカー
  • カレン→ランサー、アーチャー(ギルガメッシュ)
  • バゼット→アヴェンジャー(士郎)

ループ内では起こり得る全ての可能性が集められた場所であり、サーヴァントが現界しているのも、生き残っている並行世界を選り集めていることが原因であると考えられる。ゆえに様々なルートの記憶が混在している状態であると云える。Fateルート寄りではあるが、あくまで断定することは出来ないことを付記しておく。

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