機械仕掛けの蛇奇使い
感想
基本的にファンタジー要素の多い話。上遠野さん作品は、短編に見える作品でもどこかで一つの世界に繋がっているので、全作品を読んでいれば、どこがどう他の作品と繋がっているのかということがわかる。
実は単行本となった機械仕掛けの蛇奇使いの前身が、プロローグの引用での虚無を心に蛇と唱えよという題名になっていた。それに加筆修正と推敲と設定の変更を重ねて単行本とされている単行本化前は電撃hp掲載。
変更部分
- ルルドバイパーという名前
- ルルドバイパーの容姿と性別。前の設定では妖艶な女だった。ついでに言葉使いも違う。
- ルルドバイパーの設定全般。前の設定では機械という設定もなく、また魂がないという設定もなかった。
- 魂を写し取ったという手を握る行為が、前では言語を認識するための接吻をしていた。
- イラスト担当が違う。
- ラストも違う。
考えただけでもこれだけあるが、殆どルルドバイパーに関する変更が多い。主要な人物だから変更するだけでも大変だったろうと思う。
変更した理由を考えるに、ナイトウォッチシリーズとの関連性を持たせるためであると考えられる。ナイトウォッチシリーズは虚空牙という敵が対象となって物語が繰り広げられる。
「そうさ──おまえたちはなんも知らんだろうが、この世界というのはひとつの実験場なんだよ。空の向こう側の敵にボロ負けして、どん詰まりになった人類の文明が、うまいこと生き延びる道というのがあるのか、ないのか──外から観察するために拵えられた仮想現実とでもいうのか」
「どうして……ここにあれがいるんだ?オリジナル・メモリーバンクの中にしかいないはずなのに──なんで超高速空間戦闘兵器のスペックオリジナルデータが、こっちの世界に紛れ込んでいるんだ?──ま、まさか……」
この部分がナイトウォッチシリーズを読んでいなければおそらく分からない部分だろう。
超高速空間戦闘兵器はナイト・ウォッチのことだ。このシリーズは、宇宙に進出した人類が正体不明の敵虚空牙によって進出を止められるのを余儀なくされ、それぞれの星間に分散しているという話である。この物語では星間にとどまった人類が、打開策か何か分からないが、それを見つけるために世界を作っているということらしい。推測するにこのメカニズムは、ぼくらは虚空に夜を視るでの宇宙で生活するために普通の生活としての夢を見させている、という部分であると考えられる。その普通の生活をしている時は外の記憶はない。ぼくらは虚空に夜を視るでは現代の学校生活が主体だったが、今回は西洋の中世だったというだけなのかもしれない。冥王と獣のダンスや事件シリーズでも、関連性をもたせようとする作者の意図が見え隠れする。
ついでに水乃星透子も少しだが再登場している。随所で再登場の多いキャラクターだが、これがどういう意味を持っているのかはまだ明らかになってない。
もうひとつ。ユイがルルドバイパーに俗に言う嫉妬の思いを抱くが、相手が男性なのか女性なのか分からないのに嫉妬なのか、と思った。これは前の女性という設定が、ストーリーの流れ上生き残ったままだったため少し違和感が生じてしまったのだろうと思う。
楽しみにしている後書きを見て思った事
自分が物語を書いている時でも、自分はその登場人物が生きていると思っている。まぁ、本当に肉体があってどこかで生きているなどとは露ほども思ってもいないが、もしかしたら他の世界のどこかでこいつらいるんじゃないのかと思った事は山ほどある。
実際、生命という定義はあやふやだ。人間が生きているというならば、それを構成している分子や原子も生きていると言ってもいいのではないか。そして宇宙も生きているのではないか──だが人間の言葉で規定するにはあまりにも制限がありすぎて言葉にしても果たして正しいのかどうかまでは突き止めようがない。
だがその制限の中で想像して何かがあると思うしかない。それが人間の限界であり可能性でもある。とブギーっぽく言ってみる。
Comment, Trackback
- ルルドバイパー性転換
- なるほど、最初は女性だったのか。連載読んどけば良かった…orz...
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